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2008年12月19日 (金)

雪と涙

「風のガーデン」最終回、ラスト、黒木メイサが電車に乗るシーンを見ていて、一昨年北海道に旅行した折のことを思い出した。季節は冬の終わりで、雪はドラマのシーンほど深くはなく、霙混じりにチラホラ降る程度だったが、あの独特の感じは忘れられない。昼と夜の違いはあるが、いまから10年以上前、真冬の京都に行った帰り、大雪に降られて、関ケ原あたりで足止めくらったが、北海道の雪というのは、本州に降る雪とは、どこか違っている。春先の湿った雪であっても、それは変わらない。
札幌に二泊し、そのうち一日は日帰りで小樽に行った。雪の夜の電車に乗ったのは、その帰りのことだ。つらい旅だった。小樽では寿司を、札幌では大好きな蟹を、苦しくなるほどご馳走になった。美味しいものを食べ、大好きな酒を飲み、楽しくはしゃぐほどに、明日からのつらさがいやというほど、心に溢れた。それでも、精一杯楽しそうにふるまった。そうすることが、貴重な時間を私のために割いてくれたひとへの礼儀だと思ったからだ。幸せそうな顔をして見せることが、そのときの私にできた唯一の愛のあかしだった。いま思い出すのは、あのとき食べた蟹の味でも、味噌ラーメンの味でもなく、ただつらかった、という自分自身の心のうちだけだ。霙の降りしきる夜の中を走る電車の窓に、涙ぐむ顔が映らぬよう、必死に堪えた。堪えきれなくて、目を閉じた。眠ったふりをして、悲しみが通りすぎるのを待った。結局終わるしかない恋なら、その絶頂でやめておけばよいものを、皿まで舐めるほど貪り尽くさねば終われないのが、いつもの、私の悪い癖なのだ。

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